天使と悪魔 上・下
かの「ダ・ヴィンチ・コード」の著者による小説。といっても、実はこちらが先行した作品らしい。
お友達のみーしゃさんから、熱烈プッシュをうけ、「ダ・ヴィンチ・コード」を読み、その面白さに仰天させられてからずいぶんたつ。やっとこの本を借りて読むことができた。
こちらも主人公はおなじみのラングドン。図像学者である。図像学というもの、学生時代に少し講義で聞いたことがある。絵画や彫刻に描かれた内容から、それらが指し示す(象徴する?)ことを読み解くという学問だと思う。講義の際には、宗教画を例にとって、その中に書き込まれた小物によってこの人物が誰かとか、この人物がどういう人かとかそういったことを読み解いていったように思う。とても面白く興味深かった。
今回も謎解きにはその図像学が大きく関わってくる。
核よりも大きな破壊力を持つという反物質が科学研究所から持ち出され、なんとバチカンに持ち込まれたという。おりもおり、バチカンでは、新しい教皇様を選ぶ選挙を迎えようとしていた。
その死体に残されたしるしなどから、ラングドンは、次の殺人の場所、殺人方法、そして反物質の置かれている場所、更に犯人までを追跡することになっていく。
出版社/著者からの内容紹介
全米300万人を不眠にさせた、怒涛の徹夜本が、ついに日本上陸!
図像学者ラングドンの元に世界最大の科学研究所セルンの所長から紋章についての問い合わせが入る。それは男の全裸死体に押された焼印で、すでに消滅した、ガリレオが創設したという伝説の秘密結社の紋章だった……
ハ-ヴァ-ド大の図像学者ラングドンはスイスの科学研究所長から電話を受け、ある紋章についての説明を求められる。紋章は秘密結社<イルミナティ>一七世紀にガリレオが創設した科学者たちの結社のもので、この世にはもう存在しないはずの伝説の紋章だった。それが男の全裸死体の胸に焼印として押されていたのだという。殺された男は、最近極秘のうちに世界初の大量反物質の生成に成功した科学者。反物質は核の数十倍のエネルギ-を持つが、既に殺人者に盗まれ、密かにヴァチカンに持ち込まれたという。スピ-ド感あふれ、ひねりと衝撃が連続の、タイムリミット・サスペンス!
とにかくスピーディであること、更に驚くほどの情報が詰め込まれているところが、魅力。
手がかりを読み解くということ、そしてその手がかりの先にある殺人をふせぐべく、派手に動いていく。
動と静が一緒になっていて、非常に面白い。
舞台となったバチカン、その内部構造や、組織なども興味深く感じた。
![]() | 天使と悪魔(上) (2003/10/31) ダン ブラウン、越前 敏弥 他 商品詳細を見る |
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里親募集
先生と僕
坂木さんは今、期待のミステリ作家さんの1人だ。好みの「日常の謎」系の物語をうまく描いてくれる。今回も期待にたがわぬ面白さ。
大学生になったばかりの伊藤双葉。彼は本好きだけれど、無類の小心者で、ミステリは殆ど読んだことがない。にも関わらず友人からの強引な誘いを断りきれずに(流されやすい性格でもある)推理小説研究会に入ることに・・それが縁で中学生の瀬川隼人にナンパ(?)されて彼の家庭教師を引き受ける羽目にもなってしまう。この隼人、めちゃくちゃ頭が良くて、且つ美少年・・が性格は極悪で、ミステリ大好きな中学生。塾に通う時間があったら好きな本を読みたい→でも母親が納得しない→家庭教師に習うといえばOK→御しやすい家庭教師を(ミステリ好きならばなおさら)1人巻き込めば、自分の好きなようにできる(もちろん、だからといって成績が下がったら、ばれてしまうから勉強も頑張る)という理屈で、双葉に白羽の矢がたってしまったというわけ。
この隼人がまた、ミステリを見つけてくるのがうまい上に、顔をつっこむ。でもって、双葉がまた巻き込まれやすい体質なのだ。
連絡短編集だけれど、さっくさくとあっというまに読み終えることができる。
これもまた、シリーズになってほしいなぁ。温和な双葉と、かみそり系の隼人というコンビもいいし。
そうそう、各話のラストには、隼人から双葉への「こわくないミステリ」指南もあり、巻末には彼が紹介した本たちがずらずら〜っと並べてあるのも魅力的。
唯一読んだことがなかった「天から降ってきた泥棒」が非常に気になるところである。
![]() | 先生と僕 (2007/12) 坂木 司 商品詳細を見る |
つくもがみ貸します
畠中さんといえば、しゃばけシリーズ・・だけれど、これはちょっと違う。
出版社 / 著者からの内容紹介
江戸の片隅、姉弟二人が切り盛りする「出雲屋」。鍋、釜、布団、何でも貸し出す店ですが、中にはちょっと妙な品も混じっているようで……妖怪たちが引き起こす騒動の数々、ほろりと切なく、ふんわり暖かい連作集。
損料屋・・知らない業種だった。なんでも、道具類を何でも貸し出す仕事だそうで。新規開業の料理屋にある程度押し出しがきくように、いい感じの掛け軸などを貸し出したり、大きな商いではない岡場所に布団を貸し出したりもする。
出雲屋は、そんな損料屋兼古道具屋である。普通とちょっと違うのは、彼ら姉弟が扱う品物には、「つくもがみ」になったものがいるってこと。つくもがみとは、古い道具が大切に長い間扱われる間に、それらが魂を持って妖怪となったというもの。それらが自然と(?)集まってきてしまったのが、運のつきで、出雲屋の店先は客がいないとなると、つくもがみ達のおしゃべりでうるさいったらないのだ。
つくもがみ達に徹底的にバカにされているのが、一応主である清次。彼は姉(ということになっている)お紅と一緒に出雲屋を守っている。ところが、なぜか不思議な事件がらみの依頼が彼らの店には舞い込んでくるのである。
お紅と清次の過去に隠された秘密も絡み合って、面白い連作短編集になっている。
また、つくもがみたちが、それぞれに貸し出されては情報収集してくるという形も面白いし、清次たちに直接には話しかけない掟になっているというところもうまい。
思ったよりもうまくラストも着地した感じで、あったかで気持ちのいい物語になっている。
(個人的には、一話目では、お紅の気持ちが最後こうだったなんてちっとも感じ取れなかったけれど)
できればシリーズになってほしい。二人の過去と現在はもう精算されたのだから、これからは外に向かった事件を扱ったシリーズものになるといいのに。無理かなぁ。
![]() | つくもがみ貸します (2007/09) 畠中 恵 商品詳細を見る |
温かな手
むつぞーさんのところで感想を拝見して、興味をもった一冊。
石持さんといえば、以前読んだ「Rがつく月には気をつけよう」も面白かった。気になるミステリ作家さんだ。
七つの短編からなる、連作短編ミステリ。
丁寧に、論理を積み重ねて、謎を解いていくという、美しいミステリだし、更に、その中にたくみに人間の気持ちというものが生かされている。
ただ単に、カップルの片方が理知的で、冷静で、殺人事件をすっぱりと解決するというだけでも、たぶん面白いのだろうけれど、そこに、その探偵さんが、「未知の生物」であるという仕掛けが加わる。
彼らは、人間から生命力を少しずつ吸い取りながら生きているという。
人間と皮膚を接触させることによって、人間のエネルギーを吸い取ることができ、それが彼らの食料となるのだそうだ。
ただ、美しい魂を持った人間でないと、そのエネルギーが美味しくないので、美味しいエネルギーを持つ人間(=魂が綺麗)を見つけたら、良質の食料を得るべく、その人間とともに暮らしたりするらしい。
彼らは、人間に警戒心を抱かせないために、ある程度の美形として「擬態」しているし、うまくエネルギーを吸い取ってもらえば、人間はいくら美食の日々を送っても太ることがない。また、パニックなるなど、過剰にエネルギーが放出されているときは、すっとそれを吸って、冷静にさせてくれたりもする。
おぉ、なんかちょっと彼らと暮らしてもいいかな?って思っちゃうぞ。笑。
ただ、そこには少し哀しい問題もあるのだ。
そういった設定が、最後の一篇、表題作でもある「温かな手」にうまく生かされて、鮮やか。
![]() | 温かな手 (2007/12) 石持 浅海 商品詳細を見る |
「やがて目覚めない朝が来る」
祖母の蕗さん(この名前がすごく好き)のことを、孫の視点から語る。
主人公は有加、彼女が過去を振り返り形。
その祖母は、伝説の舞台女優だったのだが、全盛期にこっそり子供(有加の父)を産み、その子供の父親の死とともに、すぱっと引退してしまう。
主人公は、母とともに小学生の頃に蕗さんの家に転がり込む。バラに囲まれた洋館へ。
普通で考えれば、分かれた夫の母(=姑)の家に、子供を連れて転がり込むなんてこと、めったにない。だけど、その後、有加の両親の馴れ初めや、父の死、母との関わりが描かれていくにつれ、それが、あたりまえのようにも思えてくる。
蕗さんのところに集う人々は、古くから蕗さんを支えてきた人ばかりで、どこかちょっと風変わりで、かかわり方も独特。彼ら一人ひとりの、老いや、暮らし方、生き方も描かれていく。
色んなタイプの老後が描かれていくわけだけれど、どれも切なく、幸せで、かわいそうという感じはしないのだ。
様々なドラマがありながら、どこか平坦であるところが、大島さんらしくて、私好みだ。
誰にだって「目覚めない朝」は来るけれど、それをどのように迎えていくのか、そこまでどのように過ごすのか、周囲はどういう風に受け止めるのか。
色んな選択肢があるけれど、それは全て、その人の選んだもの。
自分らしさを全うしたものでありたい。
静かだけれど、余韻が残る小説だった。
![]() | やがて目覚めない朝が来る (2007/11) 大島 真寿美 商品詳細を見る |
「私の男」
ファンの方には申し訳なかったけれど、私は桜庭さんの小説があまり好きではなかった。
「少女には向かない職業」も「少女七竈と七人のかわいそうな大人」もあまり好みではなく、「青年のための読書クラブ」は少しましかな〜というところだった。
思わせぶりな感じや凝った感じが好みではなく、なんといったらいいのかうまく表現できないけれど、要するに私の好きな小説というのは、もっと直接的なものか、さりげないものなのだ。
この「私の男」を読み始めたのも、直木賞受賞ということがあったからだ。
前回の直木賞だったと思うけれど、ノミネートされていた小説の殆どが面白く感じた。それに、桜庭さんはとても人気があって、評価も高い作家さんなので、苦手意識を持たずに読んでみようと思ったのだ。
前置きはさておき。
好きか嫌いかで聞かれれば、好きではない内容だ。だけど、書き方が今までとは違うように思う。今まで感じていた、凝った感じや、思わせぶりがない。強く狂おしいまでのつながりが描かれていて、「情念」というものを感じさせる。書き方も、内容も、まっしぐら。(そしてすごく気持ち悪い)
まさに「私の男」という、題名にふさわしい。
この作家さんは、まだまだ変わっていきそうな気がする。
桜庭さんが一気に、気になる作家さんになった。
![]() | 私の男 (2007/10/30) 桜庭 一樹 商品詳細を見る |
医学のたまご
内容紹介
僕は曽根崎薫、14歳。歴史はオタクの域に達しているけど、英語は苦手。愛読書はコミック『ドンドコ』。ちょっと要領のいい、ごくフツーの中学生だ。そんな僕が、ひょんなことから「日本一の天才少年」となり、東城大学の医学部で研究をすることに。でも、中学にも通わなくちゃいけないなんて、そりゃないよ……。医学生としての生活は、冷や汗と緊張の連続だ。なのに、しょっぱなからなにやらすごい発見をしてしまった(らしい)。教授は大興奮。研究室は大騒ぎ。しかし、それがすべての始まりだった……。ひょうひょうとした中学生医学生の奮闘ぶりを描く、コミカルで爽やかな医学ミステリー。
(Amazonより)
現役の医師にして人気作家である海堂さんの、新作。青春モノという感じが強く、上に書いてあるようなミステリーという雰囲気はしない。
横書きなので、最初とても読みづらく感じたけれど、慣れればなんとか。(でもやっぱり、縦書きが私は好きだ。)日経メディカルに連載ということで、対象年齢はそんなに若い人向けなのではないのかもしれないけれど、文章は14歳の少年の一人称でつづられているのもあって、非常にわかりやすい。
ただ、研究の話しになるとやはり、専門的になる。そこはやっぱりプロだもんね。素人である私には、彼が得た結果がどんなにすごいことなのかが、最初ぴんとこなくて、その後に描かれる騒動で、へ〜そんなにすごいことなのか!なんて思ったくらいだ。
あるテストで(半ば『ずる』で)最高点をとってしまった彼、一躍天才少年に祭り上げられ、医学の研究者と中学生の二足のわらじをはく羽目に。そこに、教授(&教室)の思惑、マスコミの操作、様々な大人の事情というものが絡んでくる。
そんな中で、彼が「自分らしさ」をどこまで貫けるかがポイント。
たぶん、実際の世の中でも、『子供』が直面する大きな壁がこういうことなのではないだろうか。
そして、ただまっすぐで正直でありさえすれば、なにもかもがうまくいくのではないということがある。
正直でありさえすればいい子供の世界から、うまく物事を機能させるために動く大人の世界。それらのバランスをうまくとるのが、本当の『大人』なんだろう。
そういうことを強く感じた。
![]() | 医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!) (2008/01/17) 海堂 尊 商品詳細を見る |












